スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

秘して綴らば~最終話~

「ENTWINNER」のシン様より、キリバン30,000hitリクで書いて頂いたお話。
リク内容は蔵飛でそれぞれの秘めた想いを綴る…というものなのですが、
執筆者のシン様直々に「※デス/ノートではありません←」という
ツッコミを頂いてから、私の中でデ/スノ話となってしまいました(爆)

ひーたん視点蔵馬視点・最終話の三部作のラストブロック!!

追記よりドウゾ→


秘して綴らば~最終話~






それは、息を飲むほどに静かな夜でした。



部屋の中では誰ひとり声を発するでもなく、刀を握りしめるギリ、という音だけが微かに聴こえます。





「・・・それで?」





沈黙を破ったのは、彼でした。



小さな拳からは想像も出来ない程のすさまじい力が、刀を通して彼の皮膚に伝います。声を発した彼の首筋には、既に朱線が走っています。





「オレが殺されなくちゃならない理由ぐらい、聞く権利はあると思うんだけど」





しかし、刀を握る彼の方はその力を緩めることは決してしません。握る拳に、更に力が籠ります。





「そんなもの、聞く必要はない。お前は今、ここで死ぬ」





低く唸るような、彼の呟く声。

隠しきれない憎しみが、そこには滲み出ています。





「そんなに貴方に嫌われるようなことをしたのかな、オレは」



「そんなことは関係ない。お前が死ねばすべて終わる・・・!!」





喉元を抑える刀の上に、つぅ、と鮮やかな血が一筋流れていきます。不思議なことに、刀を握ってそれを見つめる彼の表情はどこか硬く、苦しそうにも見えます。





「オレは別に、いつ死んでも構わない。もう、飽きるほど生きてきたしね」





彼は微動だにせず、刀から身を離そうともしないまま語ります。壁に掛かった電波時計が、場違いな時刻を二人に告げました。





「しかし殺されるというんなら、せめてその理由ぐらい聞いておきたいと思うのはごく当然のことだと思うけど」



「うるさいうるさい!!!お前が生きていること自体が邪魔なんだ!!」





刀を構える彼の目には、もう正常な状況判断を出来るだけの余裕があるようには見えません。彼の発した「邪魔」という言葉に、碧色の目が不気味にすぅ、と細められたのにも気づかなかったようです。





奇妙な沈黙がまた、二人を襲います。かつて仲間同志だった二人が見つめ合うその瞳にはただ、煮えたぎる恨みと凍るような憎しみが。





彼は長い髪をかき上げ、小さくため息を吐きました。そのしぐさについ目を離した彼は、自分の喉元に這い寄る気配に気づくのが遅れました。





「・・・っ、ぐッ!!」



「何というか、奇遇だね。オレもさ、ちょうど貴方を手に掛けたいと考えてたとこなんだよ」





見れば、彼の手にはとげとげしい薔薇の鞭が。そこから密かに伸びた蔓が触手のように彼の背後に忍び寄り、彼の喉に小さく鋭く巻き付いています。





「な・・・ッ、なにを、貴様・・・!!」



「貴方と一緒さ。理由なんて関係ない。ここで死んでもらう」



「ふざけた、事を・・・っ!お前は俺が・・・この手でッ!!」



「・・・それはこっちの台詞だよ」





どうして、こんな事になってしまったのでしょう。





夢の中で迎えてくれるのはいつだって完璧に理想的な、愛しい貴方。

自分だけに向けられる微笑み、自分だけを見てくれるその優しい瞳。

それは夢だからこそ叶う、限りなく切ない、密かな想い。





けれど、夢から覚めれば嫌でも気づかされてしまう。





天国のように甘い夢の中と、地獄のように冷徹な現実に。

自己嫌悪に苛まれながらも走らせるは、背徳感と愉悦が入り乱れた願い。

でも羊皮紙は、永遠にその願いを叶えてはくれない。





叶わないのなら、手に入れられないのならもう、いっそこの手で。





それは憎しみという顔をした、行き過ぎた愛のなれの果て。

絶望の淵に立たされた者が行き着く、救いのない最期。





アナタヲ殺シテ、オレモ死ヌ。





二人は一歩も引かないまま、ただ目の前の相手をじっと睨みつけています。

そのまま延々と時間が過ぎるかと思われたその時、刀を構えていた彼の手がビクリと震えました。





「・・・?」





怯えたように目を見開く彼の様子を不審に思った彼は、ゆっくりと後ろを振り向きました。彼の目線の先には、デスクに置かれたままの茶色く古ぼけた羊皮紙。





どうして。





どちらからともなく、同じ言葉が零れました。





ーーーどうして、あれがあんな所に。

ーーーどうして、彼があれを知っている?





言葉にならない疑念が、視線と視線に乗って混じり合います。彼はようやく鞭を下ろし刀から身を引くと、デスクに向かって歩いていきます。刀を下ろした彼も、凍り付いたような青い顔をして彼の背中を見ています。





羊皮紙を手に振り返ると、彼は静かな声で問いました。





「これが何だか・・・知ってるの?」





問われた彼は答えることなく必死に目を逸らし、こわばった口を引き結んでいます。





「『汝ノ身奥底ニ沈ム慾ヲ記セ。サラバ与エラレン』。その通りだったし、その通りではなかった」





その声に俯いていた顔をハッと上げた彼は、見たことのないバツの悪そうな表情をしている彼に戸惑っているようです。





「これは、オレのノート。中、読んでみる?」





しばらく探るような視線を送っていた彼でしたが、彼がその羊皮紙を手に取ることはありませんでした。





二人ともお互いに聞きたいことは山ほどあるはずなのに、それを口にはせず押し黙ったままどこか違うところを見ています。





「これを・・・どこで知った?」



「・・・貴様に教える筋合いはない」



「まぁ、そうだけどね・・・」





ふいに目と目が合って、だけどそれはどちらからともなく静かに逸らされました。





どうしてこんなに、愛おしいのだろう。

なのにどうしてこんなにも、憎いのだろう。

愛しい。苦しい。愛しい。辛い。・・・憎らしい。





暗く深い闇の淵に沈む二人の瞳に、仄暗い明かりが点ります。同じ闇に居たものだけが分かる、心が壊れそうな一瞬。抜け出せないその深い底に、二人は居ました。





羊皮紙を手にしたままの彼は、小さく零しました。





「オレは・・・貴方を殺したいと思っている」





殺したい、と言われた彼はその言葉に怯むことなく彼を見上げています。苦しみと絶望に苛まれ続けてきた彼の瞳には、今は何が映っているのでしょう。





「そして貴方も、オレを殺したいと思っている。その気持ちは、変わらない?」



「・・・あぁ」





じゃあ、こうしよう。そう言うと、彼は羊皮紙の最後のページにわずかに残った余白を小さく破り取り、彼に差し出した。





「オレはこれに、オレの望みを書く。貴方も、同じように」





愛しい人が見ている前で、彼は端正な字で呪いのような愛の言葉を綴る。






飛影を殺して、オレも死ぬ





ほんの少し目を見開いた彼だったが、ペンを渡され羊皮紙を受け取ると、ぎこちない筆致で彼の言葉に続いた。






飛影を殺して、オレも死ぬ


蔵馬を殺して、おれも死ぬ





お互いの気持ちに気づいたのに、正面きって向き合えない弱さ。

それを弱さと知っているからこそ、口に出せない想い。

同じ想いを重ね抱きながら、小さなその紙切れに頼る。





最期に、同じ夢を見よう。そして明日の朝、二人の気持ちがまだ変わらなかったら、その時は・・・。





言葉を交わすことなく、二人は顔を見合わせると小さく口づけを交わしました。それがどういう意味なのか、二人は知ろうとはしませんでした。





その日初めて、二人は一緒に眠りにつきました。











*    *    *











カーテンの隙間から、微かな日の光が差し込んできました。

ベッドの上の二人は、まだ夢の中のようです。





きっかけは、ほんの興味本位に過ぎませんでした。





胸の奥に仕舞っていた淡い想いがいつの間にかねじ曲がり、いつしか彼ら自身を苦しめ始めました。現実との境を外れだした彼らの欲望は留まることを知らず、やがて彼らの手から離れ、暴走しだしたのです。





夢の中の理想は日々加速し、それとはかけ離れていく現実。彼らはその差に耐え切れず、苦しみから一気に解放される方法を選んだのです。





しかし、彼らは夢を見るのです。





彼らの頬に伝うその幾筋もの痕は一体、何でしょう。

願ったはずの結末に壊れたその心は、何を見たのでしょう。

横たわったその冷たい身体に縋る腕は、何を乞うのでしょう。





互いに寄り添いながら見るその夢も、もうすぐ終わりを迎えます。知らずに握り合うその手と手に感じる温もりに、もうじき気が付くことでしょう。





ほら、二人が目を覚ましたようです。





「・・・飛影?」



「・・・蔵、馬」





夢から醒めた二人は、まだどこか茫然としているようです。いつの間にか繋いでいた指と指に気づいた彼らは、恐る恐る、でも、次第に力を込めて握りしめました。そして、心の底から安堵の溜め息を吐くのです。





夢で、よかった。この温もりが、胸に残る痛みが。

この身で感じる今、全てがここにある。





「これからどうしようか。約束通り、二人で死のうか?」



「・・・いつかな」





二人は目を見合って小さく笑うと、互いの頬を拭い、昨夜傷つけあった傷に口づけをし、飽きるまで何度も何度も抱き合いました。





彼らがその後どうなったかは、もはや書く必要もないかもしれません。













*    *    *










一見何の変哲もない古ぼけた羊皮紙。

表紙には、掠れた文字でこう記されているのです。






『汝ノ身奥底ニ沈ム慾ヲ記セ。サラバ与エラレン』















・・・End.











←~side K~へ
スポンサーサイト

Latest

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。