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秘して綴らば~side K~

「ENTWINNER」のシン様より、キリバン30,000hitリクで書いて頂いた
蔵飛でそれぞれの秘めた想いを綴る…というリク(o≧▽≦)ノシ
ひーたん視点・蔵馬視点+最終話の三部作になっております。
前回はひーたん視点、今回は蔵馬視点、そして最終話もね、実は既に頂いておりますのよっっ(*´艸`)スグUPスルヨ!!

追記よりドウゾ→


秘して綴らば~side K~



すれ違う人という人が思わず振り返るその美貌を制服の中に押し込め、彼は何食わぬ顔で颯爽と街中を歩いています。見目麗しいだけのただの高校生だろうって?いえいえ、とんでもない。彼はその正体を緻密に隠しながら人間界に潜み暮らす、その名も知れた大妖怪なのです。





彼がその羊皮紙を手にしたのは、いつものように退屈なある日のことでした。





彼はその日、いつもの人間の姿を捨て、まばゆいばかりの銀髪を靡かせながら魔界の森の淵に佇んでおりました。彼はあらゆる植物を司るクエスト。彼の久しぶりの帰還に、魔界中の植物は常人には聞えない声を高らかに挙げ彼を讃えます。





ワレラガ主ガ 戻ラレタ

讃エヨ 主ノ 深淵ナルチカラヲ

麗シキ 金色ノ瞳ノ奥ニ潜ム ソノ知慮知略ヲ見ヨ





植物たちの湧きかえる喝采を聞いてか聞かずか、彼はその鍛え抜かれた体躯を持て余すように魔界の森の中を悠々と闊歩していきます。



あちこちに隠されたアジトに立ち寄りながら、薬草や種子、奇妙な茸の胞子やどろりとした樹液などを集めているようです。ケガの治療に使うのか、はたまた敵の息の根を止めるのに用いるのか。それは誰にも分かりません。





あらかた必要な物も揃い、彼が最後に立ち寄ったのが小さな小さな洞窟のようなアジト。もう長い間誰も足を踏み入れていないのか、洞窟の主のような大蜘蛛が我が物顔で辺りを蜘蛛の巣だらけにしています。





もう、ここには大したものはないな。





そう思った彼が洞窟に張り巡らせてある結界を解いてアジトを開放しようとした時です。ふと彼の目に止まったのが、何とも薄汚い羊皮紙の束。



割れて散乱している壺やガラクタの隙間にあるそれは、埃を被って煤だらけでした。何気なく手に取ってみると、その羊皮紙の表紙にはこう書かれているのです。






『汝ノ身奥底ニ沈ム慾ヲ記セ。サラバ与エラレン』






こんなもの、いつ手に入れたのだろうか。



彼はあまりに長く生きてきたので、それが何だか思いだせないようです。ゴミのようなその羊皮紙に一瞥を喰わせると、彼は薬草の束や小瓶の詰まった籠の中に放り込みました。どうせ大したものじゃないから、後でどこかの下っ端にでも売りつけてやろうとでも思ったのかもしれません。











*    *    *











「昨日は学校をサボった上に今日は一日授業そっちのけだなんて、優秀な生徒は違うねぇ」





その声に顔をあげると、クラスメイトの海藤という学生が彼を見下ろしています。ある事件以来、この海藤とは付き合いのある友人と呼べるまでの関係になったようで、いつもの鉄面皮のような彼の表情とは違い、ほんの少しだけ素をのぞかせているようです。





妖怪である彼にとって、ここ人間界でまともな話が出来る相手がいるというのは貴重なことなのかもしれません。





「で、日がな一日熱心に何を見てるかと思ったら、ラブレターでも書く気かい?」





海藤が指さしたのは、あの小汚い羊皮紙の束です。どうやら、まだ捨てずにとってあったようです。





「あぁ、これ?ラブレターなんかじゃないさ。昨日魔界に行った時にアジトで見つけたんだけど、これが何だったのか思い出せなくて」





そう言う彼の言葉に海藤は眉を上げると、その羊皮紙を手に取り表紙に書かれている文句を読み上げます。





「『汝ノ身奥底ニ沈ム慾ヲ記セ。サラバ与エラレン』、か。気味の悪さで言ったら満点だな」





指先で摘まんでそれを返すと、海藤は不思議でならない、というようなジェスチャーをしてみせました。





「お前のアジトにあったんなら、お前の所有物じゃないのか?そんないかにも裏がありますみたいなシロモノ、好きそうじゃんか」



「それが覚えていないんだよ。使い方も分からないし、何か特別な呪いや妖力も感じられないけどそれがまたどこか不気味と言うか・・・」



「慎重派のお前らしくないな。そんな気味の悪い物なんか、さっさと捨てちまえよ」





彼に言われるまでもない。



怪しい、気味が悪い。それならあのまま放って置いてこればよかっただけの話。そう、それだけの話・・・。











*    *    *











さらさら、というペンの走る音が綺麗に整頓された部屋の中に響いています。部屋の窓は夜だというのに大きく開け放たれ、
まだ少し肌寒い夜風が彼の前髪を揺らしています。





煌々と照らす電気スタンドの下、彼は宿題の課題文をあっという間に書き上げた後、昨日採って来た薬草の分類をし、集めた小瓶にラベルを貼っていきます。





明日の準備をとうに済ませ、薬品棚の整理も終わりました。今夜はもう寝るのでしょう。部屋の電気を消し、伸びをした彼が電気スタンドの明かりに手を伸ばした瞬間、例の羊皮紙がふたたび目に飛び込んできました。





「汝ノ身奥底ニ沈ム慾、か・・・」





彼は小さく呟くと、それを屑籠に放り投げようとしました。が、その手が止まり、また何か考え込んでしまったようです。





ふと、何かを思い立った彼がペンを手に取り、羊皮紙の隅に小さく何かを記しました。












なるほど、用心深い彼らしい行動です。『1』とだけ書いて、彼は辺りを伺うように耳を澄ませていました。ですが何も起こりません。バカバカしい。そんな小さなため息を吐いて、彼は眠りに就きました。





しかしその夜、彼はその羊皮紙の正体に気づくことになるのです。





夢の中で彼は、難解な罠や迷路を必死で潜り抜けているようです。最後に、とうとう謎を解き明かす箱を発見しました。その箱の封印を解くと、そこには『1』とだけ書かれた紙が入っていました。





翌朝目覚めた彼は起きざまに羊皮紙を手にすると、自分の机の引き出しの奥底にしまい、厳重に呪を施しました。











*    *    *











「おい、南野。・・・南野!」





突然の声に瞼を上げると、そこには友人の海藤が立っていました。



彼は見下ろしてくる海藤の気づかわしげな目線に気づいたのか、怪訝な顔をしています。





「何、どうかした?」



「どうかしたはお前だよ。もう授業とっくに終わって誰もいないぜ」





そう言われて周りを見渡すと、確かに教室の中には人っ子ひとりいません。教室の外に広がる空は既に赤み始めています。





「あぁ、もうこんな時間か。帰らないと」



「お前、どうしたんだ?ここ最近授業中も上の空だし。さすがに当てられて答えられないなんてことはないみたいだけど」



「いや、別に何も。気にすることなんかないよ」





そう言いながら立ち上がった彼の足元が少しふらつきました。彼にしては珍しい事なのか、海藤は不気味な物でも見るような目つきです。





「おいおい、魔界の大妖怪様が貧血か?顔色も悪いようだし、何かあったんじゃないのか」



「何でもないと言ってる。構わなくていい」





友人の気遣いを受け取ることなく、彼はさっさと教室を出て行ってしまいました。残された海藤は肩をすくめ、ため息を吐くだけでした。











*    *    *











彼が部屋に帰って来たようです。





常に清潔に保たれていた彼の部屋は、今はどこか雑然としています。いつもは大きく開け放たれていたあの窓も、今はきっちりと閉ざされています。





彼は大事にしている家族との食事を摂ることもせず、鞄を放り投げて机に向かいます。唇を動かさずに何か呟くと、引き出しが音もなく開きました。中にあるのは、あの羊皮紙です。





それを手にする彼の瞳には、あの魔界で見せた余裕綽々な落ち着きはどこにも見当たりません。宵闇の訪れと共に、何かに憑かれたような背徳に酔っているような鈍い熱が、碧色の淵に籠りだします。





彼には、誰にも負けない頭脳がありました。冴えわたるその叡知も、肉体に秘められたすさまじい妖力も。
魔界にその名ありと讃えられた彼が、今や薄汚れた羊皮紙に夢中です。今はもう、自分が何者であったかも忘れてしまっているようです。





彼は今夜も必死に何かを求め、誰かに追い縋るのです。

その身に滾る言葉を1つ1つ、羊皮紙に落としていくのです。

何においても万能なはずの彼が一体、これ以上何を欲しがるというのでしょう。





誰もが蕩けるような甘いマスクで微笑んでも、何億通りの機略でもっても手に入れられなかったその何かを求め、夢だと分かっていても彼は毎夜毎夜ペンを走らせるのです。





でも、賢い彼はとっくに気づいているようです。その羊皮紙には限りがあるという事を・・・。






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