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アイツ

「翼の小箱」のコマキ様より、サイト開設2周年のお祝いに頂きましたっっ(≧∇≦)ノ彡
思わぬサプライズでめちゃめちゃうれしかったです~/// まさかまさか書いて頂けるなんて!!!
しかも!!以前、私が蔵馬の事を『飛影視点で見てる』とのたまった事を覚えててくださって、
飛影の口を借りて “蔵馬べた褒め” という、クラスト垂涎のお話wwwww
私の、クラストの、気持ちを代弁してくれてる飛影がむちゃくちゃ可愛いのです~!!
コマキ様、ホントにありがとございました~!!(嬉〃∀〃)ゞ☆

追記よりドウゾ→



アイツ


気がついたら、アイツはいつもそばにいた。


いつからだろう?斜め上から降ってくる声が心地いいと感じるようになったのは。
いつからだろう?碧の瞳に見おろされるのが嫌でないと思うようになったのは。


いつからだろう?アイツの姿を無意識に目で追うようになったのは。

鞭を扱うしなやかな体の動き。
すべらかな手先。柔らかい微笑み。
滑らかな肌。形のいい唇。
底の見えない美しく深い翡翠の瞳。
踊るように揺れる髪。
戦いの最中、舞い散る赤い血でさえも。

それらすべてから吸い付いたように目が離せなくなる。


いつからだろう?アイツの声に聞き耳をたてるようになったのは。

凛として落ち着いた透き通った声。
戦闘中に容赦なく吐かれる冷徹な声。
背中を合わせた時に聞こえる艶のある吐息。

それらすべてが、頭の中で繰り返されて、耳から離れない。


いつからだろう?アイツに触れられると、落ち着かなくなるようになったのは。

細やかな手先。長い指。
手当をする時に触れる肌は優しく、温かい。
髪から微かに香る、甘い香り。

それらが、ふとした瞬間に思い出されて、胸をざわつかせる。


アイツはいつもそばにいた。
俺の斜め後ろには、いつもアイツがいた。
アイツの抑えたような静かな妖気をいつも背中に感じていた。
でもそれが妙に居心地がいいと思った。


アイツはいつも、ズカズカとお構いなしにオレの中に踏み込んでくる。
アイツが敵の手に倒れると、心がどうしようもなく掻き乱される。
アイツに名前を呼ばれる度に、思考が掻き回される。


それでも、いつからだろう?
アイツに名前をよばれるのが嬉しいと思うようになったのは。
アイツに名前を呼ばれたいと思うようになったのは。



・・・い、・・えい


「飛影、聞いてる?」
「あ・・・」

我に返ると、くりくりとした大きなエメラルドの瞳が俺を見上げていた。

「包帯巻くの、終わったよ」
「あぁ・・・」

綺麗に笑う視線に耐えられなくて、俺は目を逸らす。

「どうしたの?貴方がぼーっとするなんて珍しいね」
「どうもしない。」
「もしかして、オレに見とれてた?」
「ふざけるな」
「ふふっ」

蔵馬は楽しそうに笑う。花のようだと俺は思う。
優しくふんわりと辺りを照らす。それに俺はまた無性に惹きつけられる・・・。

「ねえ、飛影」
「・・・」

俺が返事をしないのを“聞いている”と受け取ったのか、蔵馬は構わず続ける。

「俺が爆拳にやられそうになった時、撃とうとしてくれたでしょう?」

俺は、思わず蔵馬の顔を見た。
コイツ・・・・気付いていたのか?あの状態で・・・?

「身体は動かなかったけれど、意識はあったからね。貴方の妖気の変化は感じてたよ」

俺の心の中を見透かしたように、蔵馬は言葉を継ぐ。

「もし、あの時吏将が止めていなかったら、今ごろ大変なことになってたね。」と苦笑する蔵馬。
「でも、うれしかったよ。」

翡翠の瞳に見つめられて、その眼差しが意外にも真剣で、俺は目が逸らせなくなる。

「ね?飛影?」蔵馬は悪戯っ子のように笑う。

確かに、あの時吏将が爆拳を止めなければ、間違いなく俺は撃っていた。
目の前で傷つき、血を流す蔵馬に、どうしようもなく心がざわめいた。そしてただ見ているしかない自分自身に苛立っていた。理不尽なことは多かったが、この 武術会にゲストとして参加してしまった以上、ルールに従わざるを得ないことはわかっていた。
だが、抵抗のできない蔵馬に次々と撃たれる拳・・・
身体の内側から、沸々と湧いてくる怒りと妖気。
気が付いたら、アイツのことだけで頭がいっぱいになっていた。

だが、口から出た言葉は

「どうだかな。俺はあの下衆野郎が気に入らなかっただけだ。別に貴様を助けたかったわけじゃない。」

そう言って俺は再びそっぽを向いた。

「ほんと貴方は素直じゃないね。本当は心配してくれたんでしょう?」

真実を突かれて、思ってもいない言葉が口をついて出る。

「別に・・・。俺は貴様なんぞいなくても構わん。」

「ひどいですね。その言い方はあんまりじゃないですか。」蔵馬は苦笑いしながら答える。
はずだった。

だが、返って来た応えは期待とはまるで異なっていた。

「・・・そう・・・」

吐くように小さく呟いて、蔵馬が目を伏せたのが、視界の端で見えた。

「つれないね。」

声色が変わったのが嫌でもわかった。先程までの穏やかな気が消えて、妖気が冷たくなったように感じる。
俺と視線を合わせることなく、蔵馬は立ち上がると、包帯や薬草を片付け始めた。

あ・・・

カチャカチャと音を立てながら、薬草の入った瓶やらを手際よく片付けていく背中を見ながら、俺は自分が失言したことを悟った。
俺の中で何かがざわざわとし始める。
こんな風に蔵馬に背を向けられると落ち着かなくなる。アイツの背中は、いつも俺を不安にさせる。
アイツは、いつも俺に向いていたから。

なんでだ?俺がこんな物言いしかできないのは知っているはずだろう?
いつものように軽口でかわせばいいだろう?

だが、どんなに凝視しても、その背中は応えない。
何か言わなければと思うが、口を開いても声が喉から出てこない。
何を言えばいいのかわからない。


居心地が悪くなって、俺は乱暴にマントを羽織ると、腰掛けていたベッドから飛び降りた。
窓辺に寄って外を眺める振りをしながら、先程蔵馬が包帯を巻いた腕をそっと眺める。
綺麗に巻かれた包帯からは、僅かにアイツの妖気と匂いがする。
それだけで息苦しくなるような気がした。


「お気に召した?」

後ろから耳元で低い声で囁かれて、核がドクンと跳ねる。

「気配を消して近づくなと何度ッん・・・・・・」

振り向きざま、突然唇に触れた柔らかい感触と、鼻いっぱいに広がる甘い匂いと、目の前にある白い肌と、首筋に触るしっとりとした髪と・・・・
全ての感覚がいっぺんに襲ってきて、頭の中が真っ白になる。何も考えられず眩暈がする。

どれくらいの時間だったのかわからない。
目の前に碧が見えて、蔵馬の唇が自分から離れたのがわかった後も、混乱した頭は状況を把握できずに、俺はただ、茫然とアイツの顔を見ていた。ドックンドッ クンと核が波打つ音が頭の中でこだまのように鳴り響く。それ以外の全ての音は消え、視界は靄がかかったように周りが見えない。

「こう、したかったんだろ?」

低い静かな声が直接頭の中に響く。

「ッ・・・・」

何か言おうとして、声が出ない。
翡翠の瞳が妖しく、嬉しそうに細められた。


ポンッ。
肩に手が置かれたその感触で、まるで薄い膜が弾けるようにパァンと周りの音と視覚が戻ってきた。

今のは・・・?
夢・・・?幻・・・?

いまだに動悸は激しく体の中で打ち続けていたが、徐々にクリアになってきた思考でなんとか状況を整理しようとする。ハッと思い出して蔵馬を見ると、アイツ はつい先刻包帯を巻いていた時と変わらないように、微笑みながら「ん?」と首を傾げた。
さきほどの冷たい妖気ももう感じられない。

「さっ行きましょう。早くしないと次の試合が始まっちゃいますよ。」

まるで何事もなかったかのようにふるまう蔵馬。

あれは幻だったのか・・・?コイツが見せたのか・・・?
だがあの感覚は・・・

触れた唇の感触が思い出されて、顔が熱くなる。
「さっきのは何だったんだ?」と言葉がでそうになったが、無邪気に首を傾げたまま微笑む蔵馬に、自らあの状況を説明するなんて、とても恥ずかしくてできる わけもなく、言葉を飲み込んだ。

温かい手が肩から離れると、触れられていたところがじんわりと熱くなる。

「ほら、行こう」

俺の手より大きくて温かい手が、さらりと髪を撫でていく。

「気安く触るなっ!」

動揺しているのを気付かれたくなくて、言葉を荒げた。

「ハイハイ」

また悪戯っぽい笑顔を見せて、手をひらひらと振りながら、アイツはドアに向かう。
そうして、去っていく背中を俺はまた目で追っていた。
向けられた背中に、またざわつく心。

アイツが行ってしまう・・・。俺を残して・・・。
俺は、俺は・・・、お前が・・・

「蔵馬!」

急に焦燥感に襲われて、俺は無意識に声を発していた。
ちょうど部屋を出ようとしていた蔵馬が立ち止まり、肩越しに視線を投げかける。

「なに?」

澄んだ瞳で聞き返されて、ハッと我に返る。
一体何を、俺は言おうとしていたのか・・・?

「いや・・・」

「ふふっ。やっぱり貴方ちょっと変だね。」

口ごもる俺に、そう言ってアイツはまた笑った。綺麗で柔らかないつもの微笑みで。いつものあの声で。

「さあ、行きましょう」

これ以上何か言って、詮索されるのも気恥ずかしく感じて、促されるまま、俺は蔵馬のもとへと向かって行った。
結局さっきのは何だったのか、まだいまいち腑に落ちなかったが、

まあ、いいか・・・。

今、俺を見おろして微笑むアイツの顔を見ていたら、そんなことはどうでもいいことのように思えて、俺は一歩踏み出した。

「行くぞ」

背中にいつもと同じ、心地よい妖気の気配を感じながら。
自分の中に燻るもやもやとした妙な感覚を、さっき見た幻のせいだと自分に言い聞かせて。



Fin

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