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秘して綴らば ~side H~

「ENTWINNER」のシン様より、キリバン30,000hitリクで書いて頂きましたっっ!!
いやもう、キリバン踏んだ時の衝撃と動揺とニヤケ面は誰にもお見せ出来ません(笑)
蔵飛でそれぞれの秘めた想いを綴る…というリクをさせて頂いたのですが、
ひーたん視点・蔵馬視点にわけてくださったようでっっ Σ(゚д゚;≡;゚д゚)エ、マジ?!
まずはひーたん視点をご堪能くださいwww えも言われぬ、いじらしいひーたんっっ///
シン様、お忙しいところホントありがとございました~!!
…続き、めっちゃ気になるっっ (||゜Д゜)

追記よりドウゾ→



秘して綴らば ~side H~


ここにあるのは、羊皮紙が綴られた一冊のノート。


一見何の変哲もないこの黄ばんだ羊皮紙の束が、何も知らない二人の運命の輪をゆっくりと動かし始めます・・・。





* * *





黒衣を纏ったその小さな妖怪は、大きな剣を携え毎日のように魔界を我が物顔で飛び回っています。 その幼い手で、魔界の炎までも操ることが出来るようです。 そして何やら彼の額には、異質に輝く奇妙な光が。彼はその借り物の瞳で、一体何を見るのでしょう。


彼がそのノートを手にしたのは、いつものように退屈なある日のことでした。


彼が住まいする奇妙な虫のような形をした城の主は、 今日もいつものように頬杖をつき、足を組みつつ彼女が支配する属国からの使者を見下ろしています。 冷たい石の床に額づき、魔界の辺境自治区を任されるその長老は恭しくこう申し上げるのです。


「気高き孤高の女王よ、隠しきれぬ我らが忠誠をもって、これに記しまする」


目の前には、金銀細工の施された目も覚めるような秘宝財宝の山、山、山。 ひと山で一生遊んで暮らせるようなその眩い煌めきにも、 女王はいつもの如く心動かされたりはしないようです。


次々とお目通りにやってくる属国の使者たちからの献上品はそれはもう尋常でない量ですので、 女王の配下の者達はその運搬作業に大忙しです。


「必要ないのなら、最初から受け取らなければ良いものを」


どうやら、黒衣の妖怪はこうした地味なお仕事は苦手なようです。 身体のあちこちに鋲を穿った大柄な妖怪が、彼を嗜めるように言います。


「たとえ躯様が必要としていなくても、これは受け取ることに意味があるのだ。 支配する者とされる者、どちらもお互いの立場を再確認する為に」


黒衣の妖怪はチッと小さく舌打ちすると、両腕いっぱいに抱えた宝物たちを奥の倉庫に運びます。


倉庫の中は整理整頓もされずに、ただ物が積み上げられているだけでした。 彼は手にした貴重な品々をぞんざいにその辺に放り投げると、 踵を返してその部屋を出て行こうとしました。


その時ふと彼の目に留まったのが、何とも薄汚い羊皮紙の束。


周りにある細を凝らした豪奢な品々とは違い、それは埃を被って煤だらけでした。 何気なく手に取ってみると、そのノートの表紙にはこう書かれているのです。



『汝ノ身奥底ニ沈ム慾ヲ記セ。サラバ与エラレン』



何とも気味の悪い文句です。彼もそう思ったのでしょう。 眉根を顰めて一瞥を喰わせると、もう興味を失ってしまったようで、 それを放り出して行ってしまいました。





* * *





あれから数日。彼はどうしているでしょう。またいつもの様に魔界中を飛び回っているのでしょうか。 それとも、その辺りの木の枝を枕に惰眠でも貪っているのでしょうか。


おや、どうやら彼の様子がいつもと違うようです。珍しく自室に閉じこもり、 ベッドの上に寝そべって熱心に何かを見ています。いや、何かを書き記しているのでしょうか。


彼が熱心に見ているのは・・・なんとあの羊皮紙です。


全く興味が無さそうだったのに、いったいどういう風の吹き回しでしょう。 彼は妙に思い詰めた表情で、羊皮紙に向かいたどたどしい筆致で何かを書き留めようとしては、 溜め息を吐いています。


ほんの少しだけ、彼の書いた内容を見てみましょう。 ノートの最初の方には、単語がぽつぽつ、と連なっているだけのようです。



あたらしい よく切れる 剣

ほのおの力 を つよめる 呪文

ケガに きく くすり 




彼はきっと初めに、この羊皮紙の表紙に記されたあの文言を試すために、 思いついた自分の欲しいものを書いてみたのでしょう。


バカらしいという思いとほんの少しの期待で文字を綴ってみても、 結局何も起こりませんでした。彼は小さく毒づくと、その羊皮紙をその辺に放り投げ、 その夜は眠りにつきました。


しかし。彼は気付くのです、この羊皮紙の本来の力に。 その日の夜、彼は新しいとても良く切れる丈夫な剣を手に、 炎の力を強める呪文を口にしながら切り傷や火傷に素晴らしく効く薬を見つける夢を見たのです。


そう、この羊皮紙はここに書かれた内容を夢にしてくれる、 そんな不思議な力を持った羊皮紙だったのです。


それからと言うもの、彼はことあるごとにその羊皮紙を眺め、 思いついた事柄を書き留めていくようになりました。



氷河の くに

ゆきな

母おや




彼はどうやら自分の生まれ故郷を、彼の家族を、もう一度見てみたかったようです。 しかし彼は一度その夢を見て満足してしまったのか、 その後同じ夢を何度も見ようとはしませんでした。


彼は元来、何かに執着する性分ではありません。 生まれ故郷も自分の親も、もうとうの昔に自分の中で決着を付けてしまっている彼にとって、 夢の中で見るそれらに特に郷愁も浮かばず、感慨に浸るような事は無かったのです。


それに、妹の元気そうな姿を見たければ自分にはとっておきの特別な眼があるのですから。


そんな彼が、どうして未だに羊皮紙を手放していないのでしょうか。 彼はきっと、誰にも知られたくない大事な秘密をその心の奥底に隠してあるに違いありません・・・。





* * *





日に日に彼の表情は澱み、目も虚ろになっていきます。 誰かに話しかけられても、気づかずにぼんやりと遠くの方を見つめてばかりです。 あんなに飛び回っていた魔界にも興味を示さず、 一刻も早く夜になるのを待ち望んでいるようです。


そんな彼を見かねた女王は彼に苦言を呈しますが、一向に聞く耳を持ちません。 あんなに好きだった闘いにも全く興味を示さなくなった彼に、周りの妖怪達も心配顔です。


「時雨、飛影のヤツはどうしたんだ。まるで抜け殻だ」

「さて・・・。何者かに術を掛けられている様子はありませんが、 何かこう、魂を奪われているかのように見えます」

「魂を、ね・・・」


女王とその配下の妖怪は、黙って腕を組み沈思するばかりです。




そうこうしている間に、今日も魔界に夜の帳が広がります。 虚ろだった彼の瞳にも、仄暗い闇色の明かりが点ります。


彼には誰にも負けない瞬足が、冴えわたる剣技がありました。 名を聞けば今やどんな妖怪も震えあがるほどの妖力を、彼は持っていました。


彼の額にはめ込まれた万能の千里眼も、いまや何の役にも立ちません。 むしろ、その眼の存在すらすっかり忘れてしまっているようです。



今夜も彼は、その秘めし願いを書き綴るのです。
彼は一体、誰に会いたいのでしょう。
誰の温もりを、そんなに必死に追い求めているのでしょう。



誰にも言えない心の内を、今夜も彼は一人、何もない部屋の片隅で綴り続けます。 そんな彼は、いつになったら気づくのでしょう。 そのノートには、限りがあるという事を・・・。





を・・・。






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